DIALOGUE

thm_vol_04
Vol.4

2012.12.31

マガジンハウス 出版ディレクター

天田憲明(AMADA Noriaki)



天田憲明氏(以下天田)
大友監督ってもしかして2人いるんじゃないかと思ってまして(笑)
大友啓史監督(以下監督)
いやいや・・・ひとりでなんとか頑張ってますよ(笑)
天田
忙しい中、あちこち行ってらっしゃるし。確か故郷は東北でしたよね。我々、仲間内で“呑む復興支援”てやってるんですよ。「南部美人」※1とかガンガン注文して
監督
あ、それ大事!そういうことで経済回していかないと。ありがとうございます。やっぱり商売されている方にとっては、“売れてナンボ”ですからね。
天田
でしょう。雑誌も、震災のとき落ち込みがひどかったんです。でも雑誌は30%落ちてるんですけど書籍は0.5%しか落ちてないんですよ。去年はサッカーの長谷部選手※2の「心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣」とか「カーヴィダンス」みたいな書籍が健闘していた時期だったんで。でも弊社でしたら雑誌ターザン※3が部数伸びたりしたんですよ。皆さんの志向が変わってきているというか。自分のことは自分で、みたいな意識が出てきている気がしますね
監督
面白いですね、ターザンという雑誌に世の中の意識が向くっていうのが。突然不条理なことが襲ってきて、自分の身体も含め、自分の存在を成り立たせている大切なものを不意に失ってしまうかもしれない。多くの人がそれに気付いたということかもしれませんね。僕が考えていることとリンクしますね。『るろうに剣心』の取材の際、ライターさんに、監督は社会派なのにどうして漫画原作のメガホンを取ったんですかって聞かれたんですが、僕からしたら、地震を体験したからこそ、より肉体性というか身体性にこだわりたいと思っていて。その延長線上に『るろうに剣心』はあるんですよね。漫画原作ということに取り立ててこだわるのではなく。それと、アクションエンターテインメントって軽く見られがちなんだけど、実は世界に勝負できるのはアクションだと思っていて。アクションは言葉を必要とせずに、海を越えていけますからね。
天田
まさにね、ブルース・リーがそれを体現したとおもうんですよね。私、監督より6つ年上なんですけど、中1の冬に『燃えよドラゴン』※4で人生観変わったんです(笑) それまで空手やってたんですが、周囲の誰にも言ってなかったんです。柔道は「柔道一直線」※5で王道人気あったけど、空手は・・て感じで。でもブルース・リーの登場で一気に周囲の空手を見る目が変わったんですよ(笑) 日本では最初、ブルース・リーは空手や少林寺拳法の達人ってイメージだったけど、私は、あの速さは空手じゃないよとか思ってたんです。そしたら中国拳法が徐々に広まってきて、本とか出版されて。中国拳法って仏教の影響らしいとか、達磨大師※6がインドから持ってきたとか太極拳は陰陽五行の思想からきているらしいとか知っていくと、文化人類学的にも面白いなって。ブルース・リーっていうそれまで無名だった、いちアジア人が出ることによってムーブメントが起こって。それがいまだに消えてないってことが面白いですよね
監督
ショコタン(中川翔子※7)のいうとおりです。ブルース・リーが宇宙の中心ですよ、神ですよっていう(笑)
天田
ですよね!!(笑)
監督
俺は中学生くらいで観たのかな、『燃えよドラゴン』はいまだに最高ですよね(笑)
天田
ですよね~!!(笑)もちろん『ドラゴンへの道』※8なんかもブルース・リー自ら製作・監督・脚本・主演やってたり、『ドラゴン怒りの鉄拳』※9は実は反日的なストーリーが深くあったりしますけど、『燃えよドラゴン』は最高にクールですよね。古くないですよね。BGMがラロ・シフリン※10のところも
監督
ラロ・シフリン、いいよなあ。ブルース・リーって、初めてエンターテイメントの世界で西洋の壁をのり越えたアジア人ですからね。僕ね、ほんとにアクション撮りたかったんですよ。LAに居た時、言葉の壁もあるし、制作環境が変わって自分が何をできるのかわからなくなったことがあって、舞台とか映画観てもハッキリわかんないんだけど、ラロ・シフリンが音楽を作っている『ラッシュアワー』※11とかアクション映画だけは、つらいことやしんどいことを忘れて無邪気に楽しめた記憶があって(笑)。 で、ルーツをたどり始めてチャイナタウン行って香港映画とかを、改めて見るようになった。で、ちょうどそのちょっと前にジャッキーチェンの『サウスブロンクス』※12がボックスオフィスで1位獲ったんですね。ジョン・ウー※13とかツイハークとか中国人監督がハリウッドで撮り始めてて。ハリウッドのアクションが香港流のアクションの方法論、その影響をモロに受けていく。アジアの才能をハリウッドが取り入れ始めていった。そういうのを見てたら、世界を超えていけるのはこれなのかなって。『ラッシュアワー』でジャッキー・チェンが逃亡するときにハリウッドの標識に掴まるシーンが象徴的で面白かったんですね。映画って突き詰めるとチャップリンやバスター・キートン。言葉が無い世界でどうやってこう、見せるかってときに、身体の動きは世界共通言語なんだなって思って。俺LAで、マーティン・スコセッシ監督※14の『ミーン・ストリート』※15の共同脚本家のマーディック・マーティン※16に授業受けてたら、ある日、彼がクラスで「理想的な脚本はどういう脚本だと思う?」って聞くんですよ。そしたら「それは無声映画だ」って。すべての物語を、映像で語れることが大切だと。
天田
うーん、なるほど

監督
今年『アーティスト』※17がアカデミー賞獲ったけど、やっぱり映画の原点って「身体(からだ)」なんだなって思った。役者の佇まいも含めて。日本ではアクションってジャンルものだと思われているんだけど、アクションはジャンルではなく肉体を使ったエンターテインメントだということ、多くの人たちに深い感動や勇気を与えられるものであるということを、改めて今回の『るろうに剣心』で訴えたかったんですね。だから、実はお客さんには、アクションシーンでこそ泣いてほしいと思っていて。ちゃんと戦う理由があって、守るべきものがあって。大切なものを守るために身を挺して、必死に戦っている姿にこそ「本当のドラマ」があると思って撮っているんで。ジャンル映画にしたくないと思いながらね。そういう視点の映画だから、『るろうに剣心』もどんどん世界で上映してほしいなあ
天田
いやいけますよ。日本の戦隊ものがあれだけ海外へいってウケてますからね。パワーレンジャーシリーズですもん。子どもが日本のウルトラマンや戦隊もの見て育ってますよ。こないだね、ゴジラが日本のものだって初めて知ったっていう海外の人がいたんですよ。本当のこと教えたらびっくりしてました。「ゴジラ」※18はアメリカの映画だと思ってたって

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