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thm_vol_01
Vol.1

2013.09.04

美術監督

橋本創(HASHIMOTO Sou)



  • 雑誌CUT連載 連動企画
    「大友啓史のA ROLLING STONE GATHERS NO MOSS!!
    転がる石に苔は生えねぇ!」 ゲストトークを完全生再現
大友啓史監督(以下監督)
『転がる石に苔は生えねぇ』ってタイトル、いいでしょ?
橋本創(以下橋本)
らしい感じっす(笑)。含んだ意味が
監督
そう、二つ意味があるからね、転がる石はいつまでも苔が生えず新鮮ってのと、いつまでたっても根無し草だよって意味と。なんか、俺たちを表すのに、言いえて妙だなと思って(笑) 橋本ちゃんはそもそもどうして美術監督になったの?
橋本
わ、美術監督を語る上で一番向いてない人間にまずそれ聞きますか(笑)。俺が語ったら申し訳ないんじゃないかなって思うけど(笑)
監督
でもね、やっぱり現場すごいやってるから、現場型だと思うんですよ。そうだよね?
橋本
そうですね。まあ、現場でいろいろ変わっていくから、トータルでけっこうね、美術って。最初デザインから撮影の何ヵ月も前からもうずうっとデザイン始めて、で、何個かセットが立って、まあ僕らの中で完成したら、一旦なんかやっぱり終わる感じがするんですよ。でもほんの終わりって、映画を撮ってそれがフィルムに写るときが終わりなので・・・だから設計してデザイン画どおりにセット作って、で、それを写すときにはまたさらにその、もっとこう範囲がちっちゃくなっていって
監督
フレームがあるからね
橋本
だから俺ら、収まってるフレームの中すべてに手を入れてって、一番良い状態を現場でつくるっていう。設計したことを作るのは、みんなプロフェッショナルなんでできるんですよ。でも、現場では役者の動きも変わるし、撮るカットとは全然関係ないところも映ったりするし。ただそれも含めて、最後お客さんに見てもらう状態を、一番いい状態を目指してやるっていうのがなんか、俺の中で一番重要な仕事かなあと思うんですけど
監督
橋本ちゃんは、モニターを見てる後ろに必ず居るのよ。ずうっと一緒にモニターを俺と一緒に見てるわけ。それで、現場でいろんな要素を足していくわけですよ。たとえば俺たちだと、アクションやるならやっぱり、汚すのが好きだから、丁寧にちゃんとこう、建物の石の裏に苔をつけたりっていうところまでやるんだけど、プラス、『るろうに剣心』の戦いで言うと、剣心と外印が書斎で戦うシーン、あそこの乱れ飛んでる本のエレメントとかさ、なんかああいうとこのダシを最終的にちょっといろいろやってくれるわけですよ。だからデザイン画はあるんだけど、動的になっていくものの要素とかもガンガン現場で入ってくるわけ
橋本
鳥が飛んでたりとか(笑)。止まった世界を撮るんじゃなくてやっぱり生きてる世界を撮っていくので、僕らは。空気が動いてるって監督がよく言ってるね、感じを出していくにはじゃあどういうふうに世界を動かしていくかっていうか。これだってもう入れてるわけですよ、フワ~ッと。なんかそういう動かすっていうか、セットってね、なんていうんだろうな、ほんとは何百年も経ってたものを再現したくて作っていくんですけど、やっぱりパッと見た目はね、そういうふうになるんですよ。でもほんとの意味でそこで何十年も人が生活してた場所ではないので、やっぱりなんかどうしても、なんていうんだろうな、へたすりゃ虚の世界になっちゃうところっていうものを、どういうふうに空気を動かして人を動かして、馴染ませるかで。だから監督とよく言ってるのは、ほんとに2日目とか3日目ぐらいのセットがすごい馴染んで、『ああ、やっと馴染んできた~』とかって
監督
そうそう(笑)
橋本
だから撮影でね、50~60人、下手したら100人ぐらいの人間がそのセットの中で動いてて。普通は家屋の中でそんなに人が動くことないじゃないですか、1日動いても10人前後。でもそれが何百倍ものペースで人が動くことによって、なんか生活感っていうか、ちょっとこう落ち着いてくるっていうか
監督
翌朝のカレーライスだね(笑) 味が出てくるんですよ。その辺の着地点と、あとねえ・・・俺今回やっぱり橋本ちゃんとやって良かったなと思うのはねえ、若いから身体が動くってこと。スタッフが動けないと演出が規制されてくるんですよね。スタティックになったり、やっぱりカメラが動かせるか動かせないとかってのもね、やっぱり自分の身体が動けば映像も自然に動くけども、身体が動かなくなるとカメラも動かせなくなるんですよ。スピードも含めてね。っていうと、やっぱり今俺たち動ける時期なんですよね。スタティックなとこを極めていくというよりも、その動かすっていう動的な要素を入れてく、題材的にも過剰と言われようがどうやって動的にダイナミックにできるかが勝負。どちらかっていうと日本映画って削いでいく発想じゃないですか、予算や時間の限界とかもあるから。削いでシンプルな作りにしていくことで美意識をそこで見いだしていくっていう、非常にミニマムなほうにどちらかっていうといくっていうのが日本映画の王道だよね、むしろ)
橋本
そうですね
監督
そこをちょっと過剰にね、やるチームですよ、俺らは(笑) 過剰に作ってこうぜっていうような感じの作り込みなんですよ
橋本
狙ってますよね(笑)
監督
美術って、一方でたとえば、何かを別班体制にするとか手立てを取らないとスケジュールにハマんないことがある場合、セットを作り場を作るっていうことで、やっぱ仕掛けとして一番大きい仕掛けを作ってるでしょ、二週間前とか一週間前とかから物運んで作ってるじゃないですか、その場に。そうすると全体のプロダクションの進行状況とか、それが可能かどうかとか、無理があるかってことも含めて、意外と一番”見える”位置にいるよね
橋本
そうっすね
監督
プロダクションの全体の中で。意外とね、プロデューサーとかよりも見える位置にいるんですよ。なぜかっていうと細かいディテールとかそこに何を仕込むかとか。だって何を置くかでほんとにお金が発生したりするわけじゃないですか、小道具ひとつ取っても。だから、一番現場的にわかってる位置でもあると俺は思うんだけど。そうだよね?
橋本
うん、そうですね。なんか、もうだから全部ですよ、ほとんど(笑)。なんていったらいいんだろうなあ、背景は基本的には全部美術監督の仕事とは思っているので。『プラチナデータ』なんかはあれですよね、アクションシーンを先に準備してもらって、それと合わせるようにして本隊入れてくみたいな感じにしてたんだけど、最初は『できるでしょう』ぐらいな感じでやってたところ、それをやるととてもじゃないけど撮り切れないって気づいたりして。それ俺が言うことじゃないんだよな(笑)
監督
そう。俺が言うことじゃないんだよなと言いつつ「ハマらないかもしれない、これはそろそろヤバいですよ」っていうことも把握できる状況になっちゃうんですよ。たぶんそこで美術としてどんなスタンスの人がいるのかね、つまりデザインまでで「もうあとよろしく」っていう人もいる
橋本
多いですよね、たぶん。基本的にはやっぱり、大きなところになればなるほどちゃんとこう役割分担がしっかりしてるっていうか。ただそれは、なんていうんだろうな、役割なんですよね。デザイン画を描く人、図面を描く人、現場で動く人。まあ、基本的にはもう僕らも同じようにやるんですけど。で、衣装だったりとかっていうのはそれなりにプロフェッショナルがいて。ただ僕ら若いから、衣装にだって、なんだろう、よく澤田石(和寛<衣裳デザイナー>)とかと横のコミュニケーション、連携を、これはヤだとかこれはどうしたらいいっていうものを、突き詰められるっていうかすごい近い距離にいる。なんかこう、役職になってくとけっこうそれがもう、言うとちゃんとしてくるんで、打ち合わせの中でしか話が動かないっていうか、打ち合わせをしてこうしましょうっていうことだけになっちゃうのを、なんかそうじゃなくて、もういつもこんなふうに喋りながらコミュニケーション取ってれば、それはイヤだとか、もっともっとよくしていくことっていうのを見いだせるかなあと思って。特に衣装のね、澤田石とかはよくやってますよね、そういうことを。けっこう『るろうに剣心』なんかだとデザインするとこでも被ってきたりするんですよ。彼はキャラクターデザインって衣装のことをやってたりとかして、ただ装具だったり刀だったりとかっていうのは美術の分野になってくるんですね。そうなるとじゃあデザインどっちやんの?っていうので、まあ一緒にデザインしてみたりとかセッションしてみたりとか。で、まあ、これこっちのほうがいいとか。総合力でガツッて(笑)、高めてくっていうか。やっぱり僕ら若いんで、経験もやっぱりどうしても足んない部分だったりとかやったことないことだったりっていうのもいっぱいやんなくちゃいけなくて、でもひとりだけだとどうしてもやっぱりそんなベテランとかやってる人には負けちゃうかもしれないけど、けっこう時間の使い方と、よく言ってんだけど何倍も働いて(笑)、そうそうそう、人の倍働きゃあとりあえず倍考えられますからね、みたいな(笑)
監督
そのへんの馬力がね、やっぱりあるんですよ
橋本
僕らは俳優さん以外の、映ってるもののかなりの部分を作っているわけだけど、それが俳優と同じように生きて動いてる感覚なんですよね

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